血栓性素因部会

部会長: 家子正裕
副部会長: 森下英理子 辰巳公平
部会員: 池尻 誠 石黒 精 井上まどか 大村一将 荻原義人 荻原建一 篠澤圭子 鈴木敦夫
辻 明宏 津田博子 内藤澄悦 中村真潮 長屋聡美 根木玲子 野上恵嗣 橋口照人 林 辰弥
光黒真菜 宮田敏行 村田 満 安本篤史 横山健次

活動状況

本部会では、「血栓性素因の診療ガイドラインの作成」と「血栓性素因と関連する遺伝子学的検査の社会への普及」をその大きな活動目標としている。前者に関しては、日本人の血栓性素因は欧米人のそれとは明らかに異なるものであり、我が国独自のエビデンスの蓄積とそれに基づいたガイドラインの作成が必要と考えられる。例えば日本人のプロテインS(PS)欠損患者における日常生活の注意、手術時、妊娠時の対応をどうするかが問題となる。一方、後者については、現在様々な遺伝的素因が血栓症に関連すると報告されているが、遺伝子検査が診療に有用であるとの確固たる証拠は今のところ存在しない。これらの課題の解決に向けて、部会員が協力して取り組んでいる。
本部会活動に興味をお持ちの学会員は、是非ご参加ください。

詳細情報

  • 令和5年度活動報告書
    血栓性素因部会
    部会長 家子正裕(札幌保健医療大学 保健医療学部)

    1.令和5年度の活動報告

    a) 第18回SSCシンポジウム   

     令和5年度のSSCシンポジウムでは、「血栓性素因部会・凝固線溶検査部会合同企画」を行なった。凝固線溶検査部会(部会長 山崎昌子先生)のセッションの後、合同セッションでは、血栓症の治療薬である未分画ヘパリンおよびアルガトロバン療法における様々なAPTT試薬の感受性についてご報告頂き、より正確な検査結果をもとに適切な治療を行う必要性をご指摘頂いた。その後、「凝固制御因子検査の標準化と周知・啓発」と題し、北海道医療大学病院の内藤澄悦先生が、我が国の健常成人におけるアンチトロンビン(AT)およびプロテインS(PS)の基準値を報告した。それに先立ってAT活性試薬7種類、PS活性試薬3種類のハーモナイゼーションを国際基準品(NIBSC)およびサーベイランス用希釈検体を用いて行い、グローバルな検査結果を求める換算式を決定した。それを用いて我が国の健常成人のAT活性:85.2〜125.6%、PS活性:56.2〜151.1 %(それぞれ平均±2SD)と決定した。今後の問題点として、これらの結果の周知および啓発であることを指摘した。
    血栓性素因部会セッションでは、奈良県立医大小児科の野上恵嗣先生に「小児領域の凝固制御因子活性の標準化と基準値設定の必要性」と題して、小児領域における凝固制御因子活性の基準値設定の重要性や現状での問題点などをご報告いただいた。また、東海大学医学部附属八王子病院結血液腫瘍内科の横山健次先生から「遺伝性血栓性素因による特発性血栓症レジストリー」と題して、本レジストリーで血栓症の誘因、家族歴、遺伝子検査、診断後の治療内容などを調査することにより、今後の診断・治療ガイドラインに役立てていくことをご説明頂いた。
     

    b) ガイドライン・診療基準・共同研究などの成果

     凝固制御因子活性測定試薬の標準化と基準値設定を共同研究で検討している。
    令和5年度は、7施設の共同研究として「PS活性の標準化および健常成人の基準値設定」を行なった。まず、3種類のPS活性試薬のハーモナイゼーションを行い、国際標準品(NIBSC)に基づいた換算式を算出した。それを用いた健常成人の基準値は「56.2〜151.1 %(平均値±2SD)」と決定した。さらに、PS活性における男女差も確認した。本来は、患者(先天性PS欠乏症患者)のPS活性を基に疾患識別値を求める予定であったが、疾患データが少ないため仮の値を作成し、さらなる患者血漿の採取協力を部会員にお願いしているところである。
    同時にプロテインC(PC)標準化も行なっている。PC活性試薬4種類は本学会からの研究助成金で購入した。今後、標準品(NIBCS)などの購入が終了した時点でサーベイを開始する予定である。一方、小児における凝固制御因子活性の基準値設定は奈良医大 野本先生を中心に共同研究組織を組成して検討予定である。また、診療ガイドラインの作成も国立循環器病研究センターの根木玲子先生方を中心に進んでいる。

     

    2.令和6年度の活動計画

    a. 凝固制御因子活性の標準化

    ①PC活性試薬の標準化:4種類のPC活性試薬のハーモナイゼーションと我が国の健常成人の基準値設定を行い、PC欠乏患者の活性値より病態識別値を求める予定である。同時に、これらの標準化の結果を周知・啓発する活動にも取り組む予定である。

    ②小児における凝固制御因子活性の基準値設定:新生児から小児期までの年齢別の凝固制御因子活性に基準値の設定を目指し、サーベイランス組織を構築する予定である。

    b. その他の活動

    ①凝固制御因子活性に影響する因子、特にDOACなどの抗凝固薬を服用している患者における凝固制御因子活性の測定手順などを設定し、周知する予定である。

     

  • 令和4年度活動報告書
    血栓性素因部会
    家子 正裕(札幌保健医療大学)

    1.令和4年度の活動報告

    a) 第17回SSCシンポジウム   

     令和4年度SSCシンポジウムでは、凝固線溶検査部会と合同シンポジウムであったが、血栓性素因部会として「凝固制御因子活性測定試薬の標準化と日本健常成人における基準値設定」について現状の報告と今後についての討論を行った。まず、イントロダクションとして、遺伝性血栓性素因に伴う特発性血栓症の診断には正確な凝固制御因子活性の測定が必要で、そのためには、それぞれの活性測定試薬のハーモナイゼーションが必須で、その上で日本人における基準値の設定を行う旨が説明された。次いで、活動内容の1つとして「アンチトロンビン(AT)活性試薬の標準化と健常成人の基準値設定」について、各AT活性測定試薬における換算式の説明、およびそれを用いて設定した日本健常成人におけるAT活性基準値(75.1~135.7%)の報告があった。さらにプロテインS(PS)活性試薬の標準化及び日本健常成人のPS活性基準値設定の進捗状況の説明があった。最後に、プロテインC活性測定試薬の標準化における問題点と本部会で設定した基準値の周知・啓発について、いかに浸透させるかなどを中心に問題点が討議された。
     

    b) ガイドライン・診断基準・共同研究などの成果

     遺伝性AT、PSおよびPC欠乏症の診断基準(「血栓性素因の診療ガイドライン」)について作成中である。ISTHの推奨「AT、PC、PS欠乏症の診断方法」を日本人向けに改訂を進めている。日本人における血栓性素因は欧米におけるものと異なる可能性が高く、日本人独自のエビデンスの蓄積とそれに基づいたガイドラインの作成が必要である。改訂版が作成されたのち、部会内で検討しコンセンサスを得て、その後日本血栓止血学会内でのブラッシュアップを予定している。

     

    c) その他の活動

     現状では、上記2点が活動の中心だが、「凝固制御因子活性の基準値」設定に関しては、小児領域でも行うべく検討を進めていた。

     

    2.令和5年度の活動計画

    令和5年度は、令和4年度の活動を継続する予定である。PS活性試薬の標準化とPS活性の健常成人における基準値設定、次いでPC活性の標準化を予定している。同時に、小児科の部会員を中心に「小児における凝固制御因子活性の基準値設定」ワーキンググループを作成し、小児のAT, PC及びPS活性の基準値を設定する予定である。
    また、遺伝性AT, PC及びPS欠乏症の診断基準(血栓性素因の診療ガイドライン」)の設定も今年度で完遂し、学会内での精査検討をお願いする予定である。
     

  • 令和3年度活動報告書
    血栓性素因部会

    部会長: 根木玲子
    副部会長: 森下英理子、家子正裕
    部会員: 池尻 誠 石黒 精 井上まどか 荻原義人 小嶋哲人 篠澤圭子 鈴木敦夫
    辻 明宏 津田博子 内藤澄悦 中村真潮 長屋聡美 野上恵嗣 橋口照人 林 辰弥
    宮田敏行 村田 満 安本篤史

    1.令和3年度の活動報告

    a) 第16回SSCシンポジウム   

    ◆コロナ禍の影響でWEB開催とオンデマンド配信となった。
    「COVID-19とSARS-CoV-2ワクチンによる血栓症の最新情報」というテーマで血栓性素因部会・HIT部会(部会長 安本篤史)の共同開催とした。COVID-19による血栓症はコロナ禍の初期から知られており、またSARS-CoV-2ワクチン接種後に特徴的な血栓症がみられることがある。昨年末時点では、収束の見えない状況であったためCOVID-19に関連した血栓症について企画した。血栓性素因部会からは、以下の4演題が発表された。)

     
    【各演題の報告】

    1. COVID-19関連凝固異常(金沢大学大学院 医薬保健学総合研究科保健学専攻 病態検査学講座 長屋聡美)
    COVID-19感染患者における凝固関連因子の遺伝子多型と臨床症状との関連を評価した。遺伝子多型は、PAI-1: -675 4G/5G、PS: c.586A/G、ADAMTS13 : c.1423C/T、TAFI: c. 1040C/T、EPCR: c. 586A/Gの5種類を対象とした。274例を対象とし解析した結果、PAI-1 4G alleleとIL-6発現量が関連している可能性、またPAI-1 4G alleleはCOVID19感染患者の転機と関係する可能性が示唆されたことを報告された。

     

    2. 若年性脳梗塞を発症したCOVID-19患者の検討(国立循環器病研究センター 心臓血管内科 辻明宏)
    若年患者においては心房中隔欠損症を有する場合、COVID-19に感染した際、奇異性塞栓症の発症に注意する必要があることを報告された。

     

    3. COVID-19と抗リン脂質抗体症候群(岩手県立中部病院血液内科・臨床検査科 家子正裕)
    COVID-19の病態として、補体活性化による炎症、凝固反応・血小板の活性化、血管内皮細胞障害、NETs形成などが報告されているが、これらの機序は抗リン脂質抗体症候群(APS)の血栓形成機序に類似している。COVID-19では、高率にaPLが検出される。COVID-19の病態にaPLが何らかの形で影響している可能性について報告された。

     

    4. COVID-19: 血栓素因としての補体活性化とVWF(日本赤十字社近畿ブロック血液センター/奈良県立医科大学 藤村吉博)
    COVID-19血栓症は全身の動静脈血管に血栓を生じるが、関与因子として凝固、血小板、補体、線溶、そして血管内皮の各傷害があげられている。これらはお互い独立したものではなく、クロストークしている。ADAMTS13活性が著減する先天性TTPの病態解析と、補体C3とVWFは遺伝学的に共に共通の祖先から発生し、その交差反応性から、サイトカインストーム下、血管内皮細胞上の超巨大VWFマルチマーがプラットホームとなり、C3b結合を介して、補体第二経路を活性化する過程を説明された。

     

    【まとめ】
    COVID-19に関連した血栓症を4つの切り口から講演し、現在までわかっていること、まだわかっていないことが整理できた。COVID-19は6月初旬現在、減少傾向にはあるものの、今後の見通しは立たず、これらの知識を現場で活用していただきたい。
     

    b) ガイドライン・診断基準・共同研究などの成果

    ◆アンチトロンビン(AT)活性測定試薬の標準化:これまでの検討で設定した健常成人の基準値(135.7 ~ 75.1%)を様々な学会などで啓発と普及に努めた。

    ◆プロテインS(PS)活性測定試薬の標準化:測定原理が異なるPS活性試薬の標準化及び健常成人のPS活性基準値設定のために多施設共同研究組織(凝固制御因子標準化ワーキンググループ)を組成した。

    ◆2021年3月に発刊された「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引きQ&A」を厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班(研究代表者:森下英理子)の「特発性血栓症」サブグループを中心に作成したが、その普及・啓発活動のため血栓性素因部会も協力して医療者向けのWeb公開講座を昨年2回実施した。また2021年5月には診療の手引きを英文誌J Obstet Gynaecol Res 47: 3008-3033, 2021.に掲載し世界に向けて情報発信した。

     

    2.令和4年度の活動計画

    ◆AT活性測定試薬の標準化:健常成人AT活性測定試薬の換算式とその基準値を普及するために、学会発表などでその啓発に努める。

    ◆PS活性測定試薬の標準化:多施設共同研究で我が国でのPS活性試薬の標準化と健常日本成人のPS活性基準値を設定する予定である。

    ◆2021年に策定した「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引きQ&A」(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業 血液凝固異常症等に関する研究班で作成)の普及・啓発活動と改訂版に向けて:学会発表などを通じて、手引きの普及・啓発活動に努める。作成した手引きの問題点を洗い出し次回の改訂版に繋げる作業を行う。

    ◆各遺伝性血栓性素因の診断方法の策定:遺伝性AT,プロテインC(PC),PS欠乏症の診断基準について、ISTHの推奨に基づいたAT,PC,PS欠乏症の診断方法を日本人向けに改訂し、部会内でコンセンサスを得る。

     

  • 令和2年度活動報告書

    1.令和2年度の活動報告

    部会長: 根木玲子
    副部会長: 森下英理子、家子正裕

    a)第15回SSCシンポジウム(WEB開催)   
    血栓性素因部会,静脈血栓症/肺塞栓症部会
    テーマ「血栓性素因を再考する」
    座長:保田知生(星ヶ丘医療センター 血管外科)
       森下英理子(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 病態検査学)
     

    1.AT 活性測定試薬の標準化ならびに基準値設定の試み
    家子正裕1)3),森下英理子2)3),日本アンチトロンビン標準化ワーキンググループ3)
    1)岩手県立中部病院 血液内科・臨床検査科,2)金沢大学 医薬保健学総合研究科 病態検査学講座,3)日本アンチトロンビン標準化ワーキンググループ)
     

    2.新生児期血栓症の全国調査
    落合正行1),市山正子2), 園田素史1), 江上直樹1), 石村匡崇1), 後藤和人3), 堀田多恵子3), 康 東天3), 大賀正一1)1)九州大学大学院医学研究院 成長発達医学分野,2)福岡市立こども病院 新生児科,3)九州大学病院 検査部・臨床検査医学分野)
     

    3.手術や長期臥床,内科疾患のリスク因子について(VTE ガイドラインから)
    荻原義人(三重大学医学部附属病院 循環器内科)
     

    4.COVID-19 関連凝固異常症 -全国アンケート調査6,000例のデータから-
    森下英理子1)5),堀内久徳2)5),浦野哲盟3)5),横山健次4)5)
    1)金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 病態検査学,2)東北大学加齢医学研究所,3)浜松医科大学 医生理学,4)東海大学医学部附属八王子病院 血液腫瘍内科,5)厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班・日本血栓止血学会・日本動脈硬化学会合同「COVID-19 関連血栓症」アンケート調査チーム)
     

    5.がん関連血栓症
    池田正孝(兵庫医科大学 外科学講座 下部消化管外科)
     
    ・シンポジウムのまとめ:

    今年度のSSCシンポジウムはCOVID-19感染拡大のためWEB開催となった。血栓性素因部会では、静脈血栓症/肺塞栓症部会との共同開催とし、テーマを「血栓性素因を再考する」とした。家子先生からはAT活性測定試薬の標準化ならびに基準値の設定について、落合先生からは新生児血栓症の全国調査の結果について、荻原先生からはVTEガイドラインにおける内科疾患のVTEリスクを中心にご紹介いただき、森下先生にはCOVID-19 関連凝固異常症についての全国アンケート調査について、池田先生にはがん関連血栓症の現状ならびに最適な治療法についてご紹介頂いた。
     

    b)ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果

    1)「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引き Q&A」を厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班との共同で作成し「日本産婦人科・新生児血液学会誌. 2021;30(2): 5-54.」に掲載した。

    2)「COVID-19 関連血栓症アンケート調査結果報告」を厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班・日本血栓止血学会・日本動脈硬化学会合同「COVID-19 関連血栓症」アンケート調査チームで実施し、情報を公開した。

    3)厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班ならびに日本検査血液学会との共同で、AT活性測定法の標準化ならびに基準値を設定した。日本検査血液学会にて公表、コンセンサスを得たのち「日本検査血液学会雑誌. 2021; 22: 129-135.」に掲載した。

     

    2.令和3年度の活動計画

    1)「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する診療の手引き Q&A」の普及と啓発のための活動を実施する。

    2)「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する全国調査研究」を厚生労働省難治性疾患政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究」班を中心に実施したが、その成果の公表と学会誌に掲載する。

    3) PC、PS活性測定法の標準化ならびに基準値の設定を目指す。

    4)「アストラゼネカ社COVID-19ワクチン接種後の血小板減少症を伴う血栓症の診断と治療の手引き」を日本脳卒中学会と合同で作成、公開する。

     

  • 令和元年度活動報告書

    1.令和元年度の活動報告

    部会長: 森下英理子(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 病態検査学)
    副部会長: 小嶋哲人、津田博子

    a) 第14回日本血栓止血学会SSCシンポジウム(誌上発表のみ)
    血栓性素因部会,静脈血栓症/肺塞栓症部会
    テーマ「血栓性素因を再考する」
     
    座長:森下英理子(金沢大学病態検査学)
       保田知生(がん研究会有明病院 医療安全管理部)
    1.がん関連血栓症
    池田正孝(兵庫医科大学 下部消化管外科)
    2.新生児血栓症の全国調査
    落合正行*、市山正子、園田素史、石村匡崇、後藤和人、堀田多恵子、康東天、大賀正一(*九州大学周産期・小児医療学)
    3.遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する全国調査研究
    小林隆夫*、森下英理子、津田博子、杉浦和子、平井久也*、尾島俊之(*浜松医療センター)
    4.AT 活性測定試薬の標準化ならびに基準値設定の試み
    家子正裕*、内藤澄悦、森下英理子、日本アンチトロンビン標準化ワーキンググループ(*北海道医療大学歯学部 内科学分野)
    5.手術や長期臥床,内科疾患のリスク因子について(VTE ガイドラインから)
    荻原義人(三重大学医学部附属病院 循環器内科)

    ・シンポジウムのまとめ:

     今年度のSSCシンポジウムはCOVID-19感染を鑑み中止となり、講演は誌上発表のみとなった。血栓止血部会では、静脈血栓症/肺塞栓症部会との共同開催とし、テーマを「血栓性素因を再考する」とした。遺伝性血栓性素因、がん関連血栓症、内科疾患血栓症リスクをとりあげ、池田先生にはがん関連血栓症の現状ならびに最適な治療法について、荻原先生からはVTEガイドラインにおける内科疾患のVTEリスクを中心にご紹介いただくことになっていた。落合先生からは新生児血栓症の全国調査の結果、小林先生らは遺伝性血栓性素因妊婦についての全国調査の結果、家子先生からはAT活性測定試薬の標準化ならびに基準値の設定をご提案いただくことになっていた。

    b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果

    • 新生児血栓症の全国調査(2014年1月~2018年12月)を行い、二次調査結果より発症頻度は0.063%であり、2004年より約2倍に増加した。本調査にて遺伝性PC欠乏症を6名認めた。
    • 「遺伝性血栓性素因患者の妊娠分娩管理に関する全国調査研究」を、厚労科研「血液凝固異常症等に関する研究」班を中心に実施した。
    • 厚労科研「血液凝固異常症等に関する研究」班ならびに日本検査血液学会との共同で、AT活性測定法の標準化ならびに基準値の設定を試みた。

    2.令和2年度の活動計画

    1. AT活性測定法の標準化ならびに基準値の設定について、日本検査血液学会にて公表し、コンセンサスを得たのち、学会誌に発表し周知を目指す。
    2. PC、PS活性測定試薬の標準化を目指す。
    3. 「AT欠乏症妊婦の周産期診療ガイドライン」の作成を目指す。
    4. 「COVID-19関連血栓症」の全国アンケート調査を、厚労科研「血液凝固異常症等に関する研究」班、日本動脈硬化学会血栓部会と共同で実施し、日本における現状を明らかにし、さらには適切な血栓症予防並びに治療法を提案する。

  • 平成30年度活動報告書

    1.平成30年度の活動報告

    部会長: 森下英理子
    副部会長: 小嶋哲人、津田博子

    a)第13回SSCシンポジウム(平成31年2月16日、東京)
    テーマ「遺伝性血栓性素因の診療ガイドライン作成に向けて」
     
    座長:森下英理子(金沢大学医薬保健研究域保健学系病態検査学)
       小嶋哲人 (名古屋大学医学部保健学科病態解析学)
    第1部 検査・診断   
    1-1.我が国の健常成人におけるアンチトロンビン(AT)活性基準値制定の取り組み
    家子正裕1)、森下英理子2)、アンチトロンビン標準化ワーキンググループ3)
    1)北海道医療大学歯学部 内科学分野、2)金沢大学大学院医薬保健学総合研究科 病態検査学講座、3)アンチトロンビン標準化ワーキンググループ)
    1-2.トロンボモジュリン添加凝固波形を用いた PC/PS 経路異常スクリーニングの開発とFV 分子異常症
    橋本直樹1)、下西成人1)、荻原建一1)、吉田純子2)、堀江恭二2)、野上恵嗣1)、嶋 緑倫1)
    1)奈良県立医科大学 小児科、2)同 生理学第2)
    1-3.トロンビン Na binding region のミスセンス変異は多くがAT抵抗性を示すが、凝固活性も低下する
    田村彰吾1)、川上 萌2)、勝見 章3)、高木 明1)、早川文彦1)、小嶋哲人1)
    1)名古屋大学大学院医学系研究科 病態解析学講座、2)同 医学部附属病院 輸血部、3)国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
    1-4.レジストリ研究からみる特発性血栓症患者の特徴(遺伝的背景を含む)
    辻 明宏1)、宮田敏行2)
    1)国立循環器病研究センター 心臓血管内科 肺循環部門、2)同 脳血管内科)
     
    第 2 部 遺伝性血栓性素因の診療における課題
    2-1.先天性AT欠乏症妊婦の周産期管理はどうあるべきか?
    根木玲子1)、宮田敏行2)
    1)国立循環器病研究センター 周産期遺伝相談室、周産期婦人科、2)同 脳血管内科)
    2-2.未発症の先天性血栓性素因保持者への対応
     篠澤圭子(東京医科大学 血液凝固異常症遺伝子研究寄附講座)
    <症例提示>未発症の先天性アンチトロンビン欠乏症ヘテロ接合体保持者が血栓症を発症
    するまで
    森下英理子(金沢大学医薬保健研究域 病態検査学)

    シンポジウムのまとめ:

     血栓性素因部会では、特発性血栓性素因(遺伝性血栓性素因による)が一昨年4月に指定難病に認定され、小児から成人まで継続的な医療費助成が行われるようになった。最終的には、特発性血栓性素因の診療ガイドラインの策定を目指しているが、今回のシンポジウムでは、現状と今後の課題をテーマとした。診断の決め手となるAT・PC・PS活性測定値が現時点では標準化されていないため、家子先生らを中心に、測定法の標準化に取り組んでいる。また、野上先生らはPC/PS経路異常のスクリーニング法の開発、辻先生らは特発性血栓症のレジストリの構築、小嶋先生らはAT抵抗性についてより詳細な検討を行っている。今後のさらなる課題として、遺伝性血栓性素因妊婦の周産期管理、あるいは未発症の血栓性素因保持者の血栓症予防対策について取り組んでいく必要があることが提示された。

    b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果

    ・AT活性測定法の標準化を行った。

    2.令和元年度の活動計画

    1. PC、PS活性測定試薬の標準化を目指す。
    2. 「AT欠乏症妊婦の周産期診療ガイドライン」の作成を目指す。
    3. 特発性血栓症のレジストリを開始する。
    4. 特発性血栓症患者の遺伝子解析方法として、次世代シークエンンス(PacBioシークエンサー)を用いた解析
     を開始する。

  • 平成29年度活動報告書

    1.平成29年度の活動報告

    部会長: 森下英理子
    副部会長: 小嶋哲人、津田博子

    a)第12回日本血栓止血学会SSCシンポジウム(平成30年2月10日、東京)
    テーマ:特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の診療ガイドライン作成に向けて
     
    座長:津田博子 (中村学園大学栄養科学研究科)
    1. 部会活動の紹介ならびに指定難病「特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る)」の診断に際して
      の問題点  
      森下英理子  (金沢大学医薬保健研究域病態検査学)
    2. Antithrombin resisitance検査法の改良:Bovine FXa/Va prothrombin activatorシステムの構築と血液
      凝固分析装置搭載条件の検討
      田村彰吾1)、川上萌2) 、垣原美紗樹1)、服部有那1)、鈴木幸子1)、高木夕希1)、高木明1)、小嶋哲人1) (1)名古屋大学大学院医学系研究科病態解析学、2)名古屋大学医学部附属病院検査部)
    3. 消化管静脈血栓症における血栓性素因の頻度と病態
     池尻 誠1)、松本剛史2)、和田英夫2)  
    1)三重大学医学部附属病院中央検査部、2)三重大学大学院医学系研究科検査医学) 
    4. 我々が経験した重症型先天性プロテインC(PC)欠損症患者の長期的な抗血栓管理
     野上恵嗣、荻原健一  (奈良県立医科大学小児科)
     
     座長: 森下英理子 (金沢大学医薬保健研究域病態検査学)
    5. 当院で遺伝カウンセリング後に実施した、特発性血栓症の2家系の遺伝子解析の検討
     根木玲子1)、宮田敏行2)
     (1)国立循環器病研究センター周産期遺伝相談室、2)国立循環器病研究センター脳血管内科)
    6. 特発性血栓症患者のリスク層別化のためのレジストリ構築
     辻 明宏1)、宮田敏行2)、根木玲子3)、大郷 剛4)、関根章博5)、和田英夫6)、山田典一7)、野上恵嗣8)、森下英理子9)、小嶋哲人10)、村田 満11)  (1)国立循環器病研究センター心臓血管内科、2)同 血管内科、3)同 周産期遺伝相談室、4)同 肺高血圧症先端医学研究部、5)同 創薬オミックス解析センター、6)三重大学大学院医学系研究科検査医学、7)三重大学医学部附属病院循環器内科、8)奈良県立医科大学小児科、9)金沢大学病態検査学、10)名古屋大学大学院医学系研究科病態解析学、11)慶應義塾大学臨床検査医学)

    7. 小児血栓症の特徴と治療戦略
    石黒 精1)、笠原群生2)、阪本靖介2)、末延聡一3)、康 東天4)、瀧 正志5)、嶋 緑倫6)、大賀 正一7)
    1) 成育医療研究センター血液内科、2)成育医療研究センター臓器移植センター、3) 大分大学小児科、4) 九州大学臨床検査医学、5) 聖マリアンナ医科大学小児科、6) 奈良県立医科大学小児科、7) 九州大学成長発達医学国立成育医療研究センター小児科)

    内容:
     血栓性素因部会では、特発性血栓性素因(遺伝性血栓性素因による)が昨年4月に指定難病に認定され、小児から成人まで継続的な医療費助成が行われるようになった。最終的には診療ガイドラインの策定を目指しているが、今回のシンポジウムでは、現状と今後の課題をテーマとした。小児の病態や治療の問題点(特に重症PC欠乏症の長期的治療)、新たな治療法(重症PC患者の肝移植)の試みについて(野上先生、石黒先生)、成人(妊婦を含む)の病態や治療の問題点について(池尻先生、根木先生、森下)、遺伝性カウンセリングについて(根木先生)、アンチトロンビン抵抗性検査法の改良(田村先生)、また特発性血栓症のレジストリについて(辻先生)報告があった。

    b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果

    今後、特発性血栓性素因の「診療ガイドライン」を作成予定である。

    2.平成30年度の活動計画

    a) アンチトロンビン(AT)、PC、プロテインS(PS)活性測定試薬の標準化を目指す。
    b)「AT欠乏症妊婦の周産期診療ガイドライン」の作成を目指す。
    c) 特発性血栓症のレジストリを開始する。
    d) 特発性血栓症患者の遺伝子解析方法として、次世代シークエンンス(PacBioシークエンサー)を用いた解析を開始する。

  • 平成28年度活動報告書

    1. 平成28年度の活動報告

    部会長: 津田博子
    副部会長: 小嶋哲人、森下英里子
    部会員: 家子正裕、池尻誠、篠澤圭子、中村真潮、根木玲子、野上恵嗣、林辰也、宮田敏行、村田満
    ※平成28年度より、部会員の北嶋先生が退任、根木先生が新たに参加

    a) 第11回日本血栓止血学会SSCシンポジウム (平成29年1月21日、東京)
    テーマ「特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の診療ガイドライン策定に向けて」

    座長:津田博子(中村学園大学栄養科学研究科)
       小嶋哲人(名古屋大学大学院医学系研究科)

    1)特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の指定難病認定  
      津田博子(中村学園大学栄養科学研究科)
    2)遺伝性血栓性素因の検査における現状と問題点
     家子正裕1)、吉田美香2)、内藤澄悦2)、高橋伸彦1)、津田博子3)
    1)北海道医療大学歯学部内科学分野、2)北海道医療大学病院臨床検査部、3)中村学園大学大学院栄養科学研究科)
    3) 新生児・乳児期・小児期の特発性血栓症の診療
     野上恵嗣、萩原建一(奈良県立医科大学小児科) 
    4) 産科領域における遺伝性血栓性素因の診療
     根木玲子1)、宮田敏行2)1)国立循環器病研究センター臨床遺伝相談室、周産期婦人科併任、2)国立循環器病研究センター脳血管内科)
    5)特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の診断基準と重症度分類
     小嶋哲人(名古屋大学大学院医学系研究科)
    内容:
    特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)は、先天的な血液凝固亢進状態を背景として若年性に重篤な血栓症を発症する疾患群である。遺伝性血栓性素因としては、先天性アンチトロンビン欠乏症、先天性プロテインC欠乏症、先天性プロテインS欠乏症などが含まれる。若年発症であり、再発・再燃を繰り返しやすいことから長期の療養を要することが多い。また、その発症には不動、脱水、感染、手術、外傷、癌、妊娠などの誘発因子が深く関与する。したがって、標準化された診断・治療・予防方法を確立し、医療費助成の対象となることが望まれる。そこで、今回のシンポジウムでは、特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の診療ガイドライン策定に向けて、現状と今後の課題をテーマとした。まず、津田より特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の指定難病認定に向けた取り組みの現状が報告された後、遺伝性血栓性素因の検査の標準化(家子先生)、新生児・乳児期・小児期の特発性血栓症の診療(野上先生)、産科領域における遺伝性血栓性素因の診療(根木先生)における課題が報告された。最後に、小嶋先生より特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)の診断基準と重症度分類の概要が示され、参加者との間で活発に意見交換がなされた。

    b) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果

    「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の指定難病認定に向けて、難治性疾患等政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」(研究代表者:村田満先生)の「特発性血栓症」サブグループを中心に、血栓性素因部会も協力して診断基準および重症度分類を作成し、平成27年11月末に申請書を厚労省に提出した。平成28年3月から、本疾病を含む222疾病を対象とした第三次実施分指定難病の検討が開始した。6月に日本血液学会による承認を得て、8月末に厚生省からの要望に応じて重症度分類をBarthel Indexを用いた日常生活や社会生活の支障の程度によるものに改め、大賀正一先生の研究班が第二次実施分として申請していた「新生児・小児遺伝性血栓症」と「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の統合版「特発性血栓症(遺伝性血栓性素因による)」の検討資料を提出した。その結果、9月末の指定難病検討委員会にて平成29年度実施分指定難病24疾病の一つ(No.327)に選定された。平成29年1月の疾病対策部会にて承認され、4月から臨床調査個人票をもとに医療費助成が開始されている。

    c) その他の活動

    ISTH-SSC Scientific Subcommittee on Plasma Coagulation Inhibitors Forum at the 62th Annual ISTH-SSC Meeting (平成28年5月26日、Montpellier、France)
    Update on On-going Projectとして“Investigation into racial differences in genetic risk factor for venous thromboembolism”の進捗状況を報告するとともに、平成28年4月の熊本大地震におけるVTE発生状況について報告した。(津田)

    2. 平成29年度の活動計画

    平成28年3月末で部会長の任期が終了し、平成28年度より森下英理子新部会長の下で、活動が実施される予定である。

    (報告者:部会長 津田博子)

  • 平成27年度活動報告書

    1. 今年度の活動報告

    部会長: 津田博子
    副部会長: 小嶋哲人、森下英里子
    部会員: 家子正裕、池尻誠、北島勲、篠澤圭子、中村真潮、野上恵嗣、林辰也、宮田敏行、村田満
    ※平成27年度より副部会長が宮田先生から森下先生に交代し、部会員の辻先生が退任、
    家子先生、中村先生、野上先生が新たに参加

    a) 第10回日本血栓止血学会SSCシンポジウム (平成28年2月20日、東京)

    テーマ「難治性疾患としての特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」
    座長:池田正孝(大阪医療センター)
       小嶋哲人(名古屋大学大学院医学系研究科)

    1)震災後のDVTと血栓性素因との関連について  
      榛沢和彦(新潟大学大学院呼吸循環外科)ほか
    2)当院におけるDVT症例と血栓性素因検査の現状と問題点
     山本尚人(浜松医科大学第二外科)ほか
    3) 先天性血栓性素因保有者の静脈血栓塞栓症のマネジメント
     中村真潮(三重大学大学院 循環器・腎臓内科学、村瀬病院肺塞栓症・静脈血栓センター) 
    4) 新生児と小児に発症する特発性血栓症
     大賀正一(山口大学小児科)ほか
    5)「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の「指定難病」認定に向けての取り組み
     森下英理子(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科病態検査学)
    内容:
    第9回に引き続き、静脈血栓症/肺塞栓症部会(池田正孝部会長)との共同開催とした。前回、小嶋哲人副部会長より特発性血栓症の指定難病認定が喫緊の課題であると提言されたことを受けて、平成27年度に両部会が共同で取り組んだ特発性血栓症をテーマとした。特発性血栓症とは、先天的な血液凝固亢進状態である先天性血栓性素因を背景として若年性に重篤な血栓症を発症する疾患群である。今回は、特発性血栓症(先天性血栓性素因による)の指定難病認定に向けて、現状と今後の課題が報告された。静脈血栓症/肺塞栓症部会からは、震災時のDVTと血栓性素因の関連(榛沢先生)、大学病院での血栓性素因検査の課題(山本先生)、静脈血栓塞栓症のマネジメント(中村先生)の3演題、血栓性素因部会からは、新生児と小児に発症する特発性血栓症の現状(大賀先生)、指定難病認定に向けての取り組み(森下先生)の2演題が報告され、参加者との間で活発に意見交換がなされた。

    b) その他の活動

    ISTH-SSC Scientific Subcommittee on Plasma Coagulation Inhibitors Forum at the 61th Annual ISTH-SSC Meeting (平成27年6月20日、Toronto、Canada)
    Working Session #1において、On-going Project“Investigation into racial differences in genetic risk factor for venous thromboembolism”の進捗状況を報告した。 Working Session #2の“Comparative schemes for thrombophilia testing by region-country”において、日本人特有の先天性血栓性素因Protein S Tokushimaを紹介するとともに、日本で実施されている先天性血栓性素因検査の現状と問題点を報告した。(津田)

    c) ガイドライン、診断基準、共同研究などの成果

    「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の指定難病(第三次実施分)認定に向けて、難治性疾患等政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」(研究代表者:村田先生)の「特発性血栓症」サブグループ(リーダー:森下先生)が中心になって診断基準および重症度分類を作成した。作成した申請書案について、血栓性素因部会および静脈血栓症/肺塞栓症部会の部会員の皆様による審査を受け、11月末に申請書を厚労省に提出した。なお、11月の理事会において、「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の難病指定に日本血栓止血学会として賛同・支持することが承認された。

    2. 来年度の活動計画

    難治性疾患等政策研究事業「血液凝固異常症等に関する研究班」の「特発性血栓症」サブグループリーダーを津田が引き継ぎ、血栓性素因部会との緊密な協力により、「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の指定難病認定に向けた活動を進展させる予定である。さらに、「特発性血栓症(先天性血栓性素因による)」の研究と診療の進展・普及を目指して、第11回SSCシンポジウムにおいて部会シンポジウム開催を計画している。

    (報告者:部会長 津田博子)

  • 平成26年度活動報告書

    1. 平成26年度体制

    部会長: 津田博子
    副部会長: 小嶋哲人、宮田敏行
    部会員: 辻肇、林辰也、森下英里子、北島勲、村田満、篠沢圭子、池尻誠

    2. 第9回日本血栓止血学会SSCシンポジウム (平成27年2月28日、東京)

    静脈血栓症/肺塞栓症部会(池田正孝部会長)との共同開催として

    「静脈血栓塞栓症の危険因子 -先天性血栓性素因と後天性要因-」を開催した。

    1)教育講演 先天性血栓性素因の診断
    小嶋 哲人(名古屋大学大学院医学系研究科)
    2)三重大学における先天性血栓性素因の遺伝子診断
    池尻 誠 (三重大学医学部附属病院中央検査部)

    和田 英夫(三重大学大学院医学系研究科検査医学分野)

    3) (追加発言)当研究室で解析した先天性アンチトロンビン・プロテインC・プロテインS欠損症の遺伝子診断ならびに臨床所見
    谷口 文苗(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻病態検査学)

    森下 英理子(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科保健学専攻病態検査学、金沢大学附属病院血液内科)

    4)周産期母体深部静脈血栓症発症におけるプロテインS-プロテインC凝固制御系の重要性
    杉村 基 (浜松医科大学産婦人科家庭医療学講座)
    5) わが国の静脈血栓塞栓症の発症率とリスク因子 ~最近の疫学調査から~
    中村 真潮(三重大学大学院 循環器・腎臓内科学/村瀬病院 肺塞栓・静脈血栓センター)
    6) 総合討論
    静脈血栓塞栓症の危険因子とその対策について、講演者、会場参加者を交えて活発な討論がなされた。特に、小嶋先生から報告された厚生労働省の指定難病(第二次実施分)に先天性血栓性素因による静脈血栓塞栓症が含まれていない点について、今後どのような対策を進めていくべきか議論された。

    3. ISTH-SSC Scientific Subcommittee on Plasma Coagulation Inhibitors関連

    Subcommittee Project  “Investigation into racial differences in genetic risk factor for venous thromboembolism”  (59th Annual SSC meeting, Amsterdam 2013にて採択)

    Chair: H. Tsuda

    Other principal investigators: S. Kitchen, E. Castoldi, T. Hayashi

    1)  ISTH Newsletter March 2014にProject参加募集の記事を掲載した。

    2)60th Annual ISTH SSC meeting, Milwaukee, June 2014 にてProject Updateを報告

    4.APSTH関連

    1)APSTH Newsletter No.8 July 2014, Volume 4 No. 2

    APSTH役員の尾崎由基男先生、藤井聡先生のご配慮により、Research Newsとして上記のISTH Subcommittee Projectを紹介し、参加を呼びかけた。

    2)8th Congress of APSTH, Hanoi, October 2014

    Laboratory Hemostasis and Coagulationのセッションで、”Genetic abnormality of protein C and S in Asia”として上記のISTH Subcommittee Projectを紹介し、参加を呼びかけた。

     

  • 平成25年度活動報告書

    1. 新体制発足(平成25年5月31日)

    部会長: 津田博子
    副部会長: 小嶋哲人、宮田敏行
    部会員: 辻肇、林辰也、森下英理子、北島勳、村田満、篠沢圭子*、池尻誠*

    *平成25年度より参加

    2. ISTH-SSC Scientific Subcommittee on Plasma Coagulation Inhibitors関連

    Co-chairに津田博子が就任した。 (平成25年8月28日、任期2年)
    SSC Subcommittee Project “Investigation into racial differences in genetic risk factor for venous thromboembolism” を開始した。

    Chair: H. Tsuda
    Other principal investigators: S. Kitchen, E. Castoldi, T. Hayashi
    Aim/Mandate: Factor V Leiden and prothrombin G20210A are well-known hereditary thrombophilias among Caucasians, in contrast, protein S (PS) and protein C (PC) deficiencies are much more prevalent among Asians than non-Asians. PS Tokushima (K155E, p.K196E in HGVS nomenclature), a PS gene mutation with a phenotype of type II deficiency, and two PC gene mutations with phenotypes of type II deficiency, PROC c.565C>T (p.R189W) and PROCc.577_579del (p.K193del), are identified as genetic risk factors for VTE among Japanese and Chinese, respectively. In order to elucidate the racial differences in genetic risk factor for VTE, we build up a global network and investigate worldwide distribution of these three mutations representing type II deficiency.
    The description c.574_576del (p.K192del) results in the same outcome.

    3. 第8回日本血栓止血学会SSCシンポジウム(平成26年2月22日、東京)

    部会シンポジウム「遺伝性血栓性素因の最近の話題」を開催した。

    1)日本人の血栓性遺伝素因を持つモデルマウスの樹立と解析
    坂野史明(国立循環器病研究センター分子病態部)
    2)第V因子遺伝子変異による血栓症とAPC resistance
    篠澤圭子(東京医科大学血液凝固異常症遺伝子研究寄附講座)
    3) アンチトロンビンレジスタンスとその検出法
    村田萌、小嶋哲人(名古屋大学大学院医学系研究科)
    4) ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)と抗血栓作用
    森下英理子(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科病態検査学)

    以上のように、本部会の活動目標である「血栓性素因の診療ガイドラインの作成」と「血栓性素因と関連する遺伝子学的検査の社会への普及」に向けて、活動を実施した。

  • 平成23年度活動報告書
    1.学会活動平成22年7月23日~28日に京都で開催されるXXIII Congress of the International Society on Thrombosis and Haemostasis(ISTH 2011 Kyoto)に参加する。また、先立って行われるEducational and SSC Sessionsにおい、とくにPlasma Coagulation Inhibitorsセッションに参加し、血栓性素因としてのThrombophiliaに関する情報の収集を行う予定である。
    平成22年10月14日~16日に名古屋で開催される第73回日本血液学会学術集会において教育講演「血栓性素因の病因と病態」 (Risk factors and pathogenesis of Thrombophilia)が予定されている。2.その他継血栓性素因研究の新たな展開について調査・検討を行う。【日本血栓止血学会学術標準化委員会血栓性素因部会 部会員】(平成23年6月24日現在)
    北島 勲 富山大学大学院 医学薬学研究部・教授
    小嶋哲人(部会長) 名古屋大学 医学部保健学科・教授
    辻 肇 京都府立医科大学附属病院 輸血・細胞医療部・部長
    津田博子 中村学園大学 栄養化学部・教授
    林 辰弥 三重県立看護大学 看護学部・教授
    宮田敏行(副部会長) 国立循環器病センター 研究所・部長
    村田 満 慶應義塾大学 医学部臨床検査医学・教授
    森下英理子 金沢大学大学院 医学系研究科・准教授
  • 平成22年度活動報告書

    1.学会活動

     平成22年度では血栓性素因部会としては日本血栓止血学会のSSCシンポジウムを企画しなかった。
    関連学会である日本検査血液学会(7月24日(土))において、以下の共催ワークショップ(共催:株式会社シノテスト)を開催した。「プロテインSと血栓症 – 日本人血栓症予防におけるプロテインS定量測定の意義 -」

     座長; 一瀬白帝(山形大学)
    塚田博子(中村学園大学)
     演者: 濱崎直孝(長崎国際大学・薬学部)
    家子正裕(北海道医療大学)
    津田友秀(株式会社シノテスト)
    村田満(慶應義塾大学)
    森下英理子(金沢大学)
    小嶋哲人(名古屋大学)
    小林隆夫(県西部浜松医療センター)

    2.社会活動

     継続的なヘパリン注射を必要とする在宅患者では、ヘパリン在宅自己注射により通院の身体的、時間的、経済的負担が大きく軽減され、より質の高い社会生活を送ることが可能になると考えられる。こうしたヘパリン在宅自己注射を必要とする患者の負担軽減を目的に、日本血栓止血学会から厚生労働大臣あての要望書「在宅自己注射指導管理料の対象注射薬へのヘパリンカルシウムの追加の要望」が2010.7に提出され、これに積極的に関与した。

    【日本血栓止血学会学術標準化委員会血栓性素因部会 部会員】(平成23年6月24日現在)

    北島 勲 富山大学大学院 医学薬学研究部・教授
    小嶋哲人(部会長) 名古屋大学 医学部保健学科・教授
    辻 肇 京都府立医科大学附属病院 輸血・細胞医療部・部長
    津田博子 中村学園大学 栄養化学部・教授
    林 辰弥 三重県立看護大学 看護学部・教授
    宮田敏行(副部会長) 国立循環器病センター 研究所・部長
    村田 満 慶應義塾大学 医学部臨床検査医学・教授
    森下英理子 金沢大学大学院 医学系研究科・准教授
  • 平成21年度活動報告書

    1.学会活動

     平成22年度では血栓性素因部会としては日本血栓止血学会のSSCシンポジウムを企画しなかった。
    関連学会である日本検査血液学会(7月24日(土))において、以下の共催ワークショップ(共催:株式会社シノテスト)を開催した。「プロテインSと血栓症 – 日本人血栓症予防におけるプロテインS定量測定の意義 -」

     座長; 一瀬白帝(山形大学)
    塚田博子(中村学園大学)
     演者: 濱崎直孝(長崎国際大学・薬学部)
    家子正裕(北海道医療大学)
    津田友秀(株式会社シノテスト)
    村田満(慶應義塾大学)
    森下英理子(金沢大学)
    小嶋哲人(名古屋大学)
    小林隆夫(県西部浜松医療センター)

    2.社会活動

     継続的なヘパリン注射を必要とする在宅患者では、ヘパリン在宅自己注射により通院の身体的、時間的、経済的負担が大きく軽減され、より質の高い社会生活を送ることが可能になると考えられる。こうしたヘパリン在宅自己注射を必要とする患者の負担軽減を目的に、日本血栓止血学会から厚生労働大臣あての要望書「在宅自己注射指導管理料の対象注射薬へのヘパリンカルシウムの追加の要望」が2010.7に提出され、これに積極的に関与した。

    【日本血栓止血学会学術標準化委員会血栓性素因部会 部会員】(平成23年6月24日現在)

    北島 勲 富山大学大学院 医学薬学研究部・教授
    小嶋哲人(部会長) 名古屋大学 医学部保健学科・教授
    辻 肇 京都府立医科大学附属病院 輸血・細胞医療部・部長
    津田博子 中村学園大学 栄養化学部・教授
    林 辰弥 三重県立看護大学 看護学部・教授
    宮田敏行(副部会長) 国立循環器病センター 研究所・部長
    村田 満 慶應義塾大学 医学部臨床検査医学・教授
    森下英理子 金沢大学大学院 医学系研究科・准教授
  • ヘパリン在宅自己注射

    血栓性素因をもつ患者などでの血栓症の治療や予防に有用で最も広く用いられている抗凝固薬にヘパリンがある。継続的なヘパリン注射を必要とする在宅患者では、自らヘパリンを注射すること(ヘパリン在宅自己注射)により、通院の身体的、時間的、経済的負担が大きく軽減され、より質の高い社会生活を送ることが可能になると考えられる。しかし、我が国の保険制度ではヘパリンが在宅自己注射の対象薬となっておらず問題となっている。こうしたヘパリン在宅自己注射を必要とする患者の負担軽減を目的に、日本血栓止血学会から厚生労働大臣あての要望書「在宅自己注射指導管理料の対象注射薬へのヘパリンカルシウムの追加の要望」が2010.7に提出された。


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